東京都のHS様
アンサンブル エリージア:スピーカーチューン

■はじめに                                


既に国内代理店が取り扱いを停止してるアンサンブル社(スイス)のエリージアというスピーカーを使い始めて、今年の12月で8年が経ちます。決して安価な製品ではありませんでしたので、当時の私には結構な投資でした。
しかし、音楽が大好きで、CDを聴いて楽しむ趣味は一生無くならない。であれば、大切な音楽の為の投資として無駄だとは思いませんでした。

アンサンブル社はようやく自社ホームページを立ち上げました。
          (右リンク->)
しかし、私が愛用するモデルは既に現行製品から退いて久しいです。

アンサンブルHP

私は音楽好きの仲間の間ではオーディオ・マニアと思われてます。
でも、果たして私はオーディオ・マニアなんでしょうか?
ただ言えることは、音楽が無かったらオーディオは存在しなかったでしょう。 つまり、オーディオは音楽を楽しむための手段であって目的ではないという事。
とは言え、手段を疎かにしたら目的(音楽)とは達成し難いものです。

オーディオにどれだけ投資出来るか、様々な制約無しには考えられませんが、 どれだけお金を使う用意があるかは、その人にとって音楽がどれ程の位置を 占めているのか?という事だと思います。

楽器に無頓着な演奏家はいません。自らの音楽を極めるには優れた楽器が必要です。 そして、楽器から最高の音が出せるよう、楽器をベストの状態にしてステージに立ち ます。

音楽家がこれ程までに真剣に音楽に向かう以上、聴き手である自分も、それに見合う 努力の欠片くらいは示してこそ、音楽と音楽家に対して礼を尽くすことに なるのではないか?言い換えれば、演奏家に取っての楽器同様、オーディオは 再生音楽ファンにとって楽器同然で、仇や疎かにしてはならないと思います。
そして、音楽を心ゆくまで楽しみたい。本当に音楽に酔わせてくれる装置が欲しい。
そう思って、買い換えを重ねた結果、現ラインナップは以下のとおりになり、 既に6年が経ちます。

CDPも Pract さんにお願いしてフル・チューン済みです。
   CDP:Bow Technologies, ZZ-Eight
 プリアンプ:Ensemble, Virtuoso
パワーアンプ:Ensemble, Corifeo
    SP:Ensemble, Elysia + Landmark Stands
  ケーブル:Goldmund
        Transport

zz-eight


        PowerAmp

Corifeo


        Elysia

Elysia




そしてコンタクト・クリーナーのCCSによって Goldmund のケーブルが如何に素晴らしいケーブルであるかを実感しました。CCSを使うことによって、ケーブル本来の性能と持ち味が出るようになった、という事です。
        CCS

CCS

因みに、電源ケーブル、インターコネクト、SPケーブルと、全てを同社製にして現在使用中です。

アンサンブルのエリージアというスピーカーは小型でもそのサイズを感じさせないスケール感があります。更に音の反応の良さ、解像力、透明度、そして音楽表現の巧みさ等々、デザイナーである、ウルス・ヴァグナー氏のセンスが感じられる製品造りに魅力を感じてます。

しかし、同社製スピーカーには「高域に特有のクセがある」とか、「ハイ上がりの音」というネガティブな表現も付いて回りました。事実、私が今までに苦労してきたのも この部分だったのです。ソースによっては理想的に再生出来ても、ちょっとクセの あるソースの場合、そのクセを強調する傾向があり、そんな場合、ボリュームを 落として聴かざるを得ない。そんな不満が拭い去れなくなってきたのです。
それに対して、音がシャープな方向に行く要素を極力排除するようにしました。 その一例として、スピーカー底面に取り付けてた純正スパイクを外し、専用スピーカー スタンドに付けてたスパイクも取り外し、MDF素材のスタンド底面を板の間の床にベタ置きにしました。

一方で、より正確な再現力実現の為、スピーカー・ユニットのマエストロ処理、CDPのフル・チューンアップ、そして接点ロスを避ける為のCCS使用により、明らかな改善を目の当たりにしてきました。確かに、以前より遙かに良くなってきました。しかし、言い換えれば、ソースの情報を忠実に伝える程に、変換器であるスピーカーの "特質" が最終的に課題となって残ったのです。
        Maestro

Maestro

要するに、ここまで "追い込まれた" という事なんです。



 ■エリージアのチューニングを本気で考えた切っ掛け

そこに飛び込んできたのが、フィルム・コンデンサKP1832。

「KP1832は独レーダーシュタイン(ERO)社のオーディオ用フィルムコンデ ンサです。特に1μ以下の製品はパラレルコンデンサとして素晴らしい効果を示し ます。例えばスピーカネットワークのコンデンサに、1個パラに接続するだけで、 特に高音域で著しい改善効果があります。」
KP1832

KP1832

そして、オーグライン。

「銀に少量の金をまぜることで、銀特有のギラギラした感じを払拭し、暖かみとつや やかさを維持しながら同時に材料としての耐食性も飛躍的に改善しました。延伸性 の良好な素材を、特殊処理にて完全なストレスフリー化を実現。ハイスピードで豊 か、微細なニュアンスまで逃さない、圧倒的な情報量をお楽しみ下さい。」

AugSP

AugSP

Pract さんのHPに書かれた上の説明に心を乱されない筈はありません。(苦笑)

KP1832とオーグラインで、私のエリージアを何とか出来ないものだろうか?
自分の装置から流れてくる音(音楽)を聴いて、何処を良いと感じ、何処をオカシイと判断するか、自分の判断力とセンスが問題になってきます。変な部分を変と感じなくては困るし、良い部分は良いと判断出来なくては話しになりません。 要は私自身の中にある "リファレンス" をしっかりと育む必要があります。

それには可能な限り、コンサートに行って "生" の音(音楽)に触れる必要があります。国内は勿論のこと、クラシックが好きですからヨーロッパ旅行は大好きで、今までに、ベルリン・フィルハーモニー、ウィーンのムジークフェライン、そしてコンツェルトハウス。 ロンドンではウィグモア・ホール。アムステルダムのコンセルトヘボウ等々、欧州旅行の際は、大抵コンサートに行って現地の音に親しんできました。

ただ、コンサートはオーディオの音質改善のヒントを得たい為だけに行くのではありませんので、念のため(笑)。
何と言っても演奏そのものを楽しむこと。ライブ・ステージで醸し出される感興や音楽的感動を自分の中に蓄えること。 ホールに拡がる音がどのように響き伝わるか、という事を自分の感覚の中に浸透させる事なのです。

しかし、こうした経験を踏まえて冷静に自分の装置で音楽を聴くと、色々と不満が耳に付いてくるものなのです。

そして、以下のようにチューニングをお願いすることにしました。
 

 1.内部配線の交換(記載員数は片側分)
   ・引き込み線とウーハー
     オーグラインSP/IIに交換(1.2m)
   ・ツィータ配線とレベルスイッチ配線
     0.8mmオーグ+テフロンチューブに交換(1.2m)
 2.コンデンサに追加
     KP1832とStyloFlexNSFをパラ接続(8set)
 3.ネットワークのマエストロ処理

Network

Tune後のNetwork

エリージアは Pract さんにお預けして、じっくりと時間を掛けて調整して頂く事にしました。そしてチューニングを終えて拙宅に戻ってきたのが5月12日。しかし、折しも修理中だったアンプが未だ戻ってこず、音を鳴らせたのは5月21日の夜でした。この鳴らすことが出来なかったブランクが尾を引いて、直ぐさまチューニングの効果を感じられるような鳴り方はしてくれませんでした。

KP1832、オーグライン共に、エージングが必要で、明らかな改善が聴き取れるようになったのは、鳴らし始めて2週間を過ぎた辺りからでした。聴くCD1枚1枚から以前は期待できなかった魅力がゆっくりと、しかし確実に聴き取れるようになってきました。

 
 ■具体的に感じられる効果


1.解像力の大幅改善

特に、録音が冴えないと思ってたオーケストラ録音に顕著にその改善が伺えます。 靄がかかったような音で、反応が鈍いと思ってた演奏がそうではなかった。 CDにはキチンとした情報が入ってたにも関わらず、真っ当に示されてなかった。 そういう事だと思います。今まで聞こえてこなかった音が実は存在してた。
こんな例を見せられてしまうと、CDに収録された演奏の良し悪しを いい加減には言えなくなってしまいます。良くないと思ってた演奏を もう一度聴き直さない事には、濡れ衣を着せたままになってしまいます。

2.情報量の増大、音離れの改善。

情報量が増えるという事は、要するに解像力が高くなったのだと思います。 それと、音の伝搬速度が飛躍的に上がってる。つまり伝送特性が向上してる。 という事のように思えます。だから音離れが良いと感じられるようになりました。
元々、ハイスピードなスピーカではあるんですが、更にその特質が向上してるんです。
とにかくスピーカーの周りに音がへばり付かず、音場の広がりとその再現性が 素晴らしく、透明度の高いサウンドステージが広がり、楽器の存在感もリアルです。

当然、SN比も良くなり、ピアニッシモでのクリアネスがより顕著になり、 更にフォルテッシモで音が煩くならないので、音楽の高揚感と興奮を阻害されません。 今までは、フォルテではどうしても音が煩くなり、音量を落としたくなりましたから。

3.楽器の自然な質感

耳を刺激する高域のクセが押さえられ、穏やかになりました。 とはいえ、シャープな音はシャープに再生されます。しかし、耳に不快な音を 出さなくなりました。これは非常に嬉しいです。 要するに声や各楽器の音とその質感が極めてナチュラルになってるんです。 解像力を高め、情報量が増え、音離れが良くなり、最終的に極めてナチュラルな音に 改善された、という事です。

録音の良いCDは当然の事ながら、従前、録音が良くない、演奏もイマイチだと 思ってたCDが、決してそんな事はない、それなりに聴けるCDだったという事。 これも嬉しい発見で、CD friendly なスピーカーに成長しました。

ああ、今までに中古屋に里子に出したCDを全部取り戻したくなりました。(^^;

 
 ■終わりに


生演奏と再生音楽は根本的に違うものですが、再生音楽からどれだけ生演奏の エッセンスを紡ぎ出せるか。どれだけそのイメージを再現できるか。 声や楽器の質感がどのように再現されるか。一瞬でも再生音楽である事を忘れさせてくれるような響き方をしてるだろうか。

それもこれも、CDを生演奏の代用品だとは考えてなく、再生音楽を生演奏とは 性格は異なるも、音楽を楽しむという次元においては全く同等のものとして 捉えてるからに他なりません。

音楽は読んで字のごとく "音を楽しむ" とあるように、音楽を聴く欲求を満たす 要素の第一歩は綺麗な音。綺麗な音を聴きたい、という欲求だと思います。 美しい旋律も "美しい音" で奏でられてこそ、聴き手を酔わせられるのであって、 その為に名演奏家はより良い楽器を求め、最高の音が出せるように腕を磨きます。

そしてCDで音楽を聴く場合、その美しい音で奏でられ録音された旋律を、 美しく再生してくれる装置が必要になります。

各々のオーディオ機器は個性があります。無色透明で色づけがあってはならない とは言っても、明らかに個性が認められますし、そもそも無色透明なんて事は 信じてません。要は、その個性を知ってどう折り合っていくかだと思います。

アンサンブルのスピーカー、エリージアには結構強い個性が感じられる場合がありました。この個性を押さえたい、そう思ったのがチューニングを思い立った主原因です。しかし、誤解を避けるために言わせて頂ければ、エリージアの個性の肯定的な部分はしっかりと残しています。

完成品に手を加えることに抵抗が無かったわけではありません。
しかし、完成品といってもユーザーが異なれば使われる環境も様々で、異なる環境や要求に応じてのチューニングも自然の成り行きだと思います。 というより、意地の悪い見方ですが、所詮、メーカー製品は利益を上げるためには、量産体制に入った途端にコストによる妥協を迫られます。
つまり、何処かで手抜きせざるを得ないんですね。

ある意味では、今回のチューニングはその手抜き部分の是正という見方も可能かも知れません。


2003年6月20日記


HS様、大変詳細なレポートをありがとうございました。(Pract記)


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